AIプロダクト量産加速 ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」24/5/12号
2024/5/20
ブルームバーグ・インテリジェンス・リサーチによると、
生成AI(人工知能)市場は2022年の400億ドルから10年以内に1.3兆ドルに急成長。
年平均成長率は42%に達すると予測されている。
その予測を裏付けるように、米国ではものすごい数の生成AIプロダクトが雨後のたけのこのように現れている。
たとえば「Lumen5」は魅力的な動画を、「Suno」はオリジナルの曲を、テキストを入力すれば誰でも作れるし、
「Copy.AI」はテーマやキーワードを入力するだけで、広告文やブログ記事を瞬時に生成できる。
なぜ、こんなにAIプロダクトは次々と量産されているのだろうか?
従来のSaaSなどのプロダクト開発では、広範なプログラミング作業が必要であり、
膨大な資金と有能なエンジニアが必要だった。
しかし生成AIの時代に入ると、ChatGPTのような先進的ツールがすでに開発されており、
これらをAPIによって簡単に統合できるようになった。
これは、レストランの料理人が新メニューのレシピを開発することにたとえられる。
開発の舞台である「キッチン」は、すでに高性能な設備が整っている。
AIの世界で言えば、AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)のような
クラウドコンピューティングプラットフォームはその一例だ。
包丁や鍋など必要な「調理器具」もAPIによって手軽に使える。
AIの世界で言えば、「TensorFlow」や「PyTorch」といったAIモデルの訓練に使われる
機械学習フレームワークが当てはまる。
これらの環境が整ったことで、料理人(開発者)は、顧客の味覚(ニーズ)に合わせて、
迅速かつ柔軟にメニュー(プロダクト)を調整できるようになった。
だから量産が可能になったわけだ。
ただしプロダクト開発が簡単になると、別の要素での差別化が必要になる。
その要素とは「データ収集と活用」だ。
適切なデータが大量になければ、AIは本来の機能を果たせない。
だから市場にAIプロダクトを投入した後に、大量のデータを収集し、
そのデータを基にアウトプット精度を継続的に改善することが重要だ。
たとえば、レストランなら顧客の好みや注文パターン、在庫・発注数、コストなど。
宿泊施設なら宿泊嗜好やサービスの評価、工場では生産効率や品質管理など。
これらのデータの質と量が企業の競争優位性に直結し、新たなビジネス戦略を導く鍵となるのである。
つまり「他社にない自社の強みとは何か」という問いは、
今や「他社にはない自社独自のデータとは何か」と同義語だ。
この重要な問いに答えるためには
「我々はどんなAIプロダクトを開発できるのか」という思考トレーニングが非常に重要である。
そして想像上のプロダクトでもよいので、それがどのように独自の価値を生み出し、市場にどんな影響を与えるか。
それを理解することが、企業の競争力を強化する突破口となる。
ひいては企業の競争力を強化するリーダー育成の突破口となるだろう。
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