都市を活気づけるカギ ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」19/3/18号
2019/3/25
地域創生の鍵を1つだけ挙げるなら、皆さんは何を挙げるだろうか。
私の答えは、迷うことなく「インバウンド」だ。
私は2012年より、毎年、全国を講演会で巡りながら、20カ所以上の都市を定点観測してきた。
当初はどの都市も雰囲気は真っ暗だったが、今年は「過去にしがみつき停滞している地域」と
「未来に向かって活気づいている地域」の明暗がはっきりと分かれていた。
その違いを生んだのは、「海外からの観光客が訪れているか」なのは、疑いようがない。
外国人観光客の消費は、この6年間ですさまじく伸びている。
国の統計によると、18年の訪日外国人の数は3119万人で12年の836万人と比べ、3.7倍強の増加。
消費総額は4.5兆円で、12年の1.08兆円と比べ、4.1倍強も増えている。
コンビニでの消費額でも、
中国の電子決済サービスのアリペイをローソンで利用した客の購入単価は約1500円(19年1月)。
非利用者の客単価は約540円(17年12月)。
ざっくり言えば、中国人は日本人の約3倍も消費しているわけだ。
外国人観光客を取り込んでいる都市には、ほんの数年前とは全く異なる光景がある。
たとえば沖縄や札幌では、かつて外国人観光客が目立っていたのに、今や、完全に街に溶け込んでいる。
活気のある地域は、例外なく外国人観光客の受け入れ努力をしている。
JR九州の列車に乗っていると、韓国語と中国語で車内アナウンスが流れる。
車内で英語が流れるのは普通だが、韓国語と中国語まで流れるのは少ない。
受け入れ努力が実を結んでいるのは、観光地に限らない。
北海道の東川町は、日本語学校留学生への奨学金を支給、
ICカードでポイントを発行したところ、それが呼び水となり、商店街の売り上げが大幅に増えた。
さらに北海道のベンチャー企業による、地域通貨・電気自動車・再生エネルギーを組み合わせた
次世代交通プロジェクトと出合い、ポイントと自動運転バスとを連動した全国の地域活性化に向けて協働している。
「外国人がいる」ことを前提に街づくりを進めることで発展している。
外国人観光客を取り込むには、こうした友好的な受け入れ努力に加え、外国人目線で自分の地域を見ることも重要だ。
日本人から見ると何でもない場所でも、外国人から見ると、憧れの「聖地」ということがある。
神奈川県藤沢市の江の島は、多くの中国人観光客が訪れるが、
理由は湘南を舞台とした人気バスケットボール漫画『スラムダンク』の影響だ。
大ヒット映画『君の名は。』のモデルになった岐阜県の飛騨高山市内の駅や神社も、外国人が多く訪れている。
また、日本は一部の外国人バイカーから「オートバイの聖地」と見られている。
ホンダやヤマハ、カワサキを生んだすごい国ということで、ツーリングで訪れる外国人が増えているという。
外国人にとって、あなたの地域は何の聖地なのか?
その答えが、地域の伝統を見直し、未来の社会をデザインしていく突破口になる。
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