米に7年遅れ「オンライン教育」 ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」19/4/1号

2019/4/9

マーケティングの分野で米国に比べて日本は5年遅れているのが、私の実感だが、
さらに遅れている分野を見つけてしまった。

少なくとも7年遅れの分野。それが「オンライン教育」である。
最近ではEdTech(エドテック)とも呼ばれている。

国土の広い米国では、移動せずに学習できるオンライン教育が伸びるのは、当然だが、
そのクオリティーは私の想像を超えていた。

オンライン講座が簡単につくれるツールが豊富で、質の高い講座が次々と生まれているのだ。

「BRANCH TRACK」というツールを使えば、パワーポイント感覚で、実写映画のような講座がつくれる。
ある行政が犯罪を減らすために作った青少年向けの講座は、その一例だ。

遊びに出かけようとする少年が小型ナイフを携帯するか迷うシーンから始まる。
「取る」「取らない」、どちらの選択肢を選ぶかで、次のシナリオが異なり、
悪い方を選ぶと、最終的には人を傷つけ犯罪者に――。

少年の小さく刹那的な行動が大惨事につながることを、臨場感あふれるカメラワークの映像で学べる。

米アドビシステムズの「キャプティベイト」などは、
仮想現実(VR)・拡張現実(AR)といった技術を活用したオンライン講座がつくれる。

さらに驚くのは、この高度な制作ツールが月わずか4100円で利用できることだ。

日本ではオンライン教育に参入する大手は少ないが、
米国ではグループ売上高も巨額になっており、アドビ社も力を入れている。

オンライン教育で後れを取るのは、国力の衰えに直結する深刻な問題といっても過言ではない。

世界的に優秀な人材の争奪戦が起きるなか、企業が競争力を増すには、
人材採用だけではなく人材教育も重要な鍵となっているためだ。

プラットフォームビジネスを手掛ける企業が増えたことで、顧客のオンライン教育の重要性も増した。

このビジネスモデルでは、サービスの提供者と利用者が関わり合う活動から、利用料などの収益を生み出す。
だから利用者にプラットフォームの使い方を教え続けないと、活動が減少、成長も止まってしまう。

プラットフォームの広告宣伝のみならず、教え込んで使いこなしてもらうことが、
消費を生むための主要な活動になりはじめている。

ただ、米国のサービスを精査すると、日本にも活路はある。

米国で提供されるのは、決まった答えのある教育で、答えのない、自分で考えを深める教育ではない。

学術研究では「オンライン教育は実演と演習の双方を組み合わせるのが効果的」とされるが、
米国のサービスは「演習」が弱い。

その点、日本は、国土が狭く、人々の距離が近い。

オンライン教育をする一方、公民館などに人々が答えのない考えを深めたり、演習したりする場所をつくれる。
オンラインとオフライン、デジタルとアナログを組み合わせたハイブリッド教育が開発しやすいのだ。

「人々が触れ合い、共に育つ」との意味を込めて、“ハイブリッド共育”と名付けたい。
それが日本ならではの突破口になる。

 

 

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