営業のAI化で適材適所 ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」20/12/28号
2021/1/4
営業分野にAIを活用する実証実験を、
私が所長を務めるマーケティングの研究組織「リブ・グローバルマーケティングエックス(GMX)」で始めた。
その中で、突出して営業成果に結びつきやすく、
営業スタッフの幸福度アップにもつながる結果が見いだされたので、お伝えしたい。
この実験は、営業活動で集めた多種多様なデータをAIで分析。
何が顧客の獲得につながるのか、その結果を元に、AIによる営業予測モデルを作るのが狙いだ。
その結果、見落としがちだったが重要な項目がわかり、予算達成を実現するキラーパスが見つかった。
まず分析データに加えたのが「営業スタッフの個性」だ。
傾聴傾向や感情配慮、楽観性などのパラメーターから、人材特性を「実務家」「起業家」「組織人」などに分類。
その個性データと今までの受注データを連動し、AIに分析させるとスタッフにより合う業界と合わない業界が判明した。
さらにその結果を見込先の企業情報に連動させる。
具体的には、社員が持っている名刺情報や、売上規模、収益状況、会計年度、社員数、社歴、
さらに役員変更などのデータだ。
これらの多くは公開されているが、統合的に把握・分析できる「人間」はまずいない。
このように、社内部署間でバラバラに散らばっているデータを横断的に組みあわせて、「AI」で分析すると、どうなるか?
将来的に実現するのはアマゾンのレコメンデーション機能の営業版だ。
例えば営業スタッフがパソコンを立ち上げると、「今日のあなたにおすすめな開拓先は!」とAIが提示してくれる。
画面には顧客の詳しい情報や、初めに提案すべき商品候補が表示される。
それを元に商談すれば成約率が格段に上がるわけだ。
さらに会社全体の売上高を上げるには、どんな人材を採用すべきか、どのような研修を行うべきか、などをデータ化する。
部署を超えて連動させることで、最小努力で売上高があがるようになる。
実際のところ、営業分野へのAI活用でどれほど生産性があがるかは、まだ実験段階で明言できない。
ただ軍隊に例えれば、統率の取れた精鋭部隊と、バラバラの野武士集団ほどの違いは出てくるだろう。
実験したところ営業成果との相関が特別に高い変数があった。
顧客の創業年数と営業スタッフの年齢だ。
要は年齢がいった会社は、年齢がいった営業スタッフが担当すると、開拓しやすい。
考えてみれば当然だが、アナログ社員だからこそ役に立てるアナログな顧客がいるわけだ。
つまり、アナログ社員は無理にデジタル化せず、アナログな能力がいきる企業を担当してもらえば皆ハッピーだ。
つまりAIは、適材適所による社員の幸福化と直結していることが見えてきた。
営業のAI化は技術的には難しくないので、これから一気に進むだろう。
だからこそAI化に向けて準備が整った企業と、そうでない企業の差が一気に開く。
営業のAI化は、社員の削減につながらない。
むしろ、AI化に遅れた企業が、業績悪化により、社員削減に追い込まれるのだ。
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