NFT、デジタルだけじゃない ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」21/5/10号

2021/5/17

3月、「ツイッターの創業者が発信した最初のツイートが3億円超で売れた」とのニュースが流れた。
一体どんな仕組みで売れたのか、と疑問に思うだろう。

その仕組みとは「NFT(ノン・ファンジブル・トークン)」。

ブロックチェーン技術によって、改ざんやコピーができなくなったデジタル資産で、
「これは本物」とデジタルの鑑定書がついたようなものだ。

NFTが画期的なのは、これまで「簡単に複製できるから」となかなか値段がつかなかった
デジタルのアート作品がNFT化することで、高額で売買されるようになったことだ。

アート作品だけでなく、冒頭のツイートのようなデジタルの文章もNFT化することが可能だ。
このMJのコラム原稿も、やろうと思えば、NFT化して売買できる。

たとえば、このNFTの保有者は著作物から発生する著作権料の一部を得られるとし、
それを100人まで分配できるように決めたら、100人が1NFTずつ保有することも可能だ。

仮にあなたが「この文章は将来、大ベストセラー書籍の中に組み込まれる」と予想し、
そこから生まれる著作権料を期待して1NFTを購入したとしよう。

そのNFTは、株や投信などと同様に値上がりしたり値下がりしたりする。
場合によっては、巨額な価値を生み出すわけだ。

一方、元のアートや文章を生み出した著作者は、
所有権が取引される際に発生する利益の一部を得られる、という設定もできる。

つまり原稿を書いた私は、原稿の所有権が移るたびに報酬が得られるのだ。
転売されるほどお金が入るのだから、実にありがたい。

これだけでも十分画期的なのだが、話はまだ終わりではない。
「デジタルツイン」、すなわち現実世界のものをNFT化することで、新たな市場が生まれているのだ。

たとえば、美術品やワイン、宝石などの収集品は、
偽造や詐欺の温床であるため、ネットで直接売買されることが少なかった。
サザビーズのような第三者が仲介することで、正当な価値がつくと考えられてきた。

しかしそれらの収集品もNFT化すれば、ネット上でも売買が可能だ。
骨董品ならそれを撮影し、画像をNFT化するのである。

NFTの所有権が移動したら、収集品の所有権も一緒に移動する。
証券化のように分割して売買する市場も作られはじめた。

「そんなNFTを誰が欲しがるのか?」と思うかもしれないが、
実はすでにスイスの上場企業がNFT化した時計をオークションにかける試みを行っている。

私の提案は日本の伝統技術をNFT化することだ。
そうすれば新たに価値を生み出せるのではないだろうか。

たとえば着物の意匠はスマホケースや壁紙のデザインに無料で使われていることもあるが、
その意匠をNFT化すれば、価値を生み出せるはずだ。

NFTはバブルだとか幻想だという人もいるが、
日本の職人芸がデジタルで記録され、未来への投資価値を持つのであれば、その可能性に賭ける価値はある。

そんな起業家が出てくることを待ち望んでいる。

 

 

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