デジタル時代の新事業開発 ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」21/11/15号

2021/11/22

新規事業の作り方が変わってきている。

従来は市場規模を調査し競合調査を行い市場ポジションを押さえられるかを見極める「3C分析」が定石だったが、
今やそれだけでは不十分だ。

デジタル時代には、潜在客のほとんどはネットで検索して会社や商品を知ることになるため、
検索エンジン最適化(SEO)対策が必須となる。

であれば、そもそも事業立ち上げの初期段階から検索エンジンに最適化した商品を設計・開発した方がいい。
そう主張するのが、「Product-Led SEO」を著したエリ・シュワルツ氏だ。

例えば「遠隔診療」の新事業を立ち上げるとしよう。
どんなに優れた最新技術やサービスであったとしても、残念ながら潜在客がネット上でそれを見つけることは容易ではない。

なぜなら「遠隔診療」というキーワードで検索すると、
全国規模で遠隔診療を展開する大企業のサービス紹介ページが上位に表示されてしまうからだ。

それならもっと狭い商圏の人々を対象にしようと、「遠隔診療」と「地名」を組み合わせたページを作ったとしても、
今度は行政機関の遠隔診療関連の解説ページが上位表示されてしまう。

そこで必要になる作業がお客様が遠隔診療にどんな「痛み(ペイン)」があるかを理解することだ。
実際にヒアリングしてみると、遠隔診療を有料で活用する人には特徴的なニーズがあることがわかった。

具体的には「治療コストが不安」「アトピーで外出したくないので遠隔診療がいい」
「人に知られたくない病気にかかっている」といった不安をもつ人が多かったのだ。

そこで全方位型ではなく、特定キーワードで検索される特化型の遠隔診療をはじめから設計・開発する。
すると、SEO的に最適化されたサービスメニューをはじめからつくるので、自然検索でローコストでお客様が集まってくる。

その後、ウェブサイトをつくり関連記事を増やせば、時間がたつほどに自然流入が増えて事業が安定するわけだ。

その特化した分野が成長しているかどうかを確認するには、
グーグルキーワードプランナーを使い、選んだキーワードの検索数の増減をみる。

さらにタクトSEOやウーバーサジェストなどのSEOツールを使えば、
競合がどんなキーワードで訪問者(トラフィック)を集めているのか、
どの検索キーワードがどれほどのコンバージョンをあげているかも容易にわかる。

商品に出会う入り口がほぼインターネットになった今、
SEOに関する数値はものの数十秒の作業で目の前に現れるようになったのだが、
ほとんどの経営幹部、事業開発担当者、売上責任者は自ら調べてみようとすることもない。

新事業100のうち実際に成功するのは3つほどと言われる。
逆に言えば97は鳴かず飛ばず。

失敗理由で多いのが「結局、市場がなかった」ことだ。
笑えない話だが、SEOツールで市場を調べておけば、こうした間違いはなくなる。

ちょっとデジタルマーケティングを勉強すれば、
この国に残された多くの可能性をつかめるチャンスはまだいくらでもある。

 

 

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