DXは女性活用がカギ ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」22/3/28号
2022/4/4
どこもかしこもDX(デジタルトランスフォーメーション)である。
私も自社で5年以上実践しているので、DXが大きな効果を生むことはよく理解している。
しかし、単に技術やツールを導入すればDXが進むわけではない。
うまくいっている企業とそうではない企業を観察すると、技術よりも重要かつ大きな課題があることがわかる。
それは「土壌」だ。
生産性アップなどの成果を「木」に例えると、DXは木を大きくするための仕組みにすぎない。
木を育てるには、仕組みの前に土壌を整えることが不可欠だ。
具体的にいえば、部門間の協力関係の強化やデータの共有化などの環境整備をしないと、
DXツールを導入してもまるで機能しない。
ところが、残念ながらほとんどの企業の土壌は整っていない。
土壌はつながっていないといけないのに、むしろ分断される一方だ。
理由の一つは、課題が細分化されていることがある。
それぞれの部門がPLG(プロダクト・レッド・グロース)やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などの
問題に取り組んでいるが、課題の根本を見極めないまま枝葉を増やしているので、幹が見えなくなっている。
課題を細分化して突き詰めていくだけでは全体最適にはならず、いつまで経っても成果は出ないだろう。
どうすればDXの土壌を整えられるのか。
カギとなるのが「女性活用」だ。
経団連が2030年までに女性管理職を管理職全体の40%以上にする目標を掲げているが、多くの企業が道半ばだろう。
だが、実は女性活用を進めるとDXも自然と進むようになる。
もちろん、単に女性を管理職にする表面的な施策では意味がない。
私が勧めるのは「全社横断の子供向け商品開発プロジェクトを立ち上げること」だ。
その意義は子育て経験のある女性が活躍できることだけではない。
多様な社員に参加してもらい、子育て中の夫婦や子供に意見を聞きながら商品を開発すると、
家庭と仕事を両立する子育て世代の女性の深い「痛み」を男性社員が深く理解するようになる。
すると、自然と協力関係が生まれるのである。
商品のプロトタイプができ、実証実験やテストマーケティングの段階に入ると、DXツールが必要になる。
ここでも活躍するのが、横の連携が得意な女性だ。
彼女たちがプロジェクト外の関係者とコミュニケーションをとることで、部門間の関係が良くなる。
すると土壌が肥沃になり、DXツールが機能し始める。
プロジェクトメンバーが自分の部署に戻ると、縦割り問題が解消された状態でツールを使える。
すると全社的にDXが推進できるわけだ。
女性活用でDXがうまく進んだ事例はまだ少ない。
女性が活躍できるポジションが少なかったからだが、今後は増えていくだろう。
女性活用を進めるリスクはほとんどない。
組織の風通しが良くなるし、育児をするうえで働きやすい職場ができるだけである。
優秀な女性が管理職登用後に孤軍奮闘し、疲れ果てて辞めることに比べればプラスしかない。
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