「マッチングの科学」に可能性 ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」23/7/31号

2023/8/7

日経ビジネスから取材依頼が入った。
その依頼は私にとって待ち望んでいた瞬間だった。

取材内容は「マッチングの科学」といわれるマーケットデザインの第一人者、
慶応義塾大学の坂井豊貴先生との対談。

実は3年前に先生の著作「マーケットデザイン」を読んでからずっとお会いしたかったのである。

マーケットデザインは
「望ましい結果をもたらすためにはどのような制度やルールを設計すればいいか」を考える学問だ。

2012年に主要な研究者であるアルビン・E・ロスとロイド・シャプレイが
ノーベル経済学賞を受賞したことにより、重要性が世界的に認知を得た。

マーケットデザインはすでに多様な分野で活用されている。
有名なのが腎臓移植プログラムだ。

腎臓移植は血液型や組織型の不適合があり、
移植希望者に配偶者や親族が必ずしも腎臓を提供できるとは限らない。

そこでマーケットデザインの理論を用いて生み出されたのが、
複数のドナーと受取人のペアを組み合わせる移植システムだ。

希望者全てに公平に機会を提供しつつ最大限の移植を実現するよう効率的にマッチングすることで、
より多くの移植を可能にした。

マーケットデザインは大学や高校の入試でも「受け入れ保留方式」という形で導入されている。

例えば、定員50人のA校が第1志望者が50人、第2志望者は10人いたとする。
第2志望者の中には、第1志望の人よりも点数が高かった人が何人かいたとしよう。

志望順位を優先すると第1志望の50人が全員合格となるが、学校側は優秀な人を獲得したい。
そこで第1志望だけで判断せず、すべての志望者の点数を見て合格者を決めている。

これが「受け入れ保留方式」だ。
この方式によってより多くの人が納得がいく結果が得られるようになっている。

私がマーケットデザインに注目したのは、この原理が奨学金提供システムに活用できると考えたからだ。

親の収入の多寡にかかわらず、誰でも良質な教育を受けられるよう
ブロックチェーンによる奨学金の提供システムを構築しようとしていた。

複雑な市場環境の中でマッチングを実現するための本質的・実用的な理論を探していたのである。

学生の進学意欲や成績、経済的なニーズなどを考慮したマッチングアルゴリズムを設計すれば、
最も助けを必要とする学生が奨学金を得られるようになる。

奨学金を提供する機関にとっても資源を最も効果的に活用でき、より多くの学生支援が可能だ。

マーケットデザインは生活のあらゆる面で利用できる強力なマーケティングツールである。
私は自著「未来実現マーケティング」を出してから
「マーケティングとは、必要な価値を必要な人に届ける仕組みづくり」とわかりやすく定義し直して伝えている。

それを具現化しているのがまさにマーケットデザインだ。

一つのマッチングが命を救うこともあり、私たちの幸福を決定する。世界を変えることすらある。
マーケットデザインの魅力は壮大な物語を感じさせることにある。

 
 

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