10倍の速度で動く読書会 ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」24/4/15号

2024/4/22

今の2倍の目標より10倍の大きな目標の方が、達成が楽。
そんなコンセプトの『10x(テンエックス) 同じ時間で10倍の成果を出す仕組み』という本が出版された。

私も同じ考えだったこともあり、主宰する読書会「リードフォーアクション」の課題書に取り上げると、
他の本とは大きく異なる効果があった。

一言でいえば、通常の読書会の10倍のスピードで人と人がつながりあい、
新しいイノベーションを生み出そうとする動きが始まったのだ。

そもそも、イノベーションを生み出す土壌はあった。

著者の名郷根修さんは、遠隔で独居高齢者を見守ることができるミリ波レーダーの
(あらゆるモノがネットにつながる)IoT技術を持ったフィンガルリンク社の経営幹部。
読書会のファシリテーターはNTTのグループ企業でマーケティング部門長を務める三宅泰世さんだ。

技術ベンチャーの経営幹部と、技術に詳しい大企業のマーケッターが
「この本をきっかけに10倍の目標を実現しよう」と読書会に参加する多様なメンバーを巻き込んだのだから、
こうなることは必然だった。

当日は約100人がオンラインで参加した。
大型介護施設の経営者、アフリカで都市開発ODA(政府開発援助)に関わる専門家、
NPOでイノベーションの場づくりをする人……。

読書会をおこなうと、参加者たちからミリ波レーダー技術を使った価値創出のアイデアが
縦横無尽にチャットで流れ始めた。

もちろん、それがすぐにビジネスになるわけではないが、
読書会で初めて出会った人同士が、火花が散るようにアイデアを生み出し始める光景には驚いた。

もしこれが1つの会社なら、たった2時間でいくつもの新規事業アイデアが生まれることになる。
10倍どころか100倍の相乗効果が、目の前で起こるだろう。

と思ったが、すぐに考え直した。
大企業なら読書会に集まるような人材は豊富にいる。

にもかかわらず、イノベーションが創出できないのはなぜか?
決定的な要素が2つあることに気づいた。

ひとつは、普段は部署ごとに分かれていて接触がないこと。
もうひとつは、社内でイノベーションの場を設けても、熱い人たちだけを集めていないからだ。

前向きな人はせいぜい2割程度。
2割の熱が8割の動かない人たちによって冷やされてしまう。

となると、解決策は何かというと、有志による読書会を開催することだ。

リードフォーアクションに参加する人も、仕事上、仕方なく来るわけではない。
自分で本を購入し参加する、向学心に燃える方々が集まるからこそ、火花が散り、沸騰する場が生まれる。

イーロン・マスクのもとで働くエンジニアによると、彼は会議の場で、管理職ではない社員にも公平に話しかける。
ただ、彼が徹底しているのは、熱意のない者を会議に加えないことだ。
だから会議室に入った途端、熱量が違うという。

熱量の高い人だけを集めて、10倍のスピードで動くほんの小さなプロジェクトをつくったらどうか?
読書会では、それを日本の活性化のために日々行っている。

 

神田昌典の「ビジネス探究」チャンネル
累計販売数400万部超のビジネス書著者、
日本のトップマーケッター(GQ JAPAN誌)として選出された「神田昌典」公式チャンネルです。
月曜20時から「神田全集~未来からの伝言」を配信中!



MAIL MAGAZINE・SNS
メルマガ・ソーシャルメディア


メルマガ一覧を見る