NFTで社会貢献 13歳提案 ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」24/10/28号

2024/11/4

8月、衆議院銀会館で開催された「子ども世界平和サミット」の審査員として登壇した。

9カ国・12人の子どもたちが世界平和について熱心にプレゼンする中、
特に心を奪われたのが13歳の少女の発表だ。

彼女は「絵を描くのが好きな子どもが才能を生かして生活できる仕組みを作りたい」と語り、
解決策としてNFT(非代替性トークン)を提案。
絵をNFTにすることで、誰もが作品を残し流通させられる仕組みを構築しようというのだ。

この発表を聞いた瞬間、私は胸が高鳴った。
今年、私たちが立ち上げた「デジタル図書館PABLOS」のビジョンと完全一致していたからだ。

公教育の探求学習を支援する社会課題解決型プロジェクトで、
図書館利用メンバーシップをNFTにして、その販売資金で運営する。
実証実験の時点で、予想以上に購入者が集まった。

NFTの有用性は大人でも理解する人が少ない。
それを中学1年生が理解し、NFTを使ったビジネスモデルを提案したのだから驚かされた。

NFTは、デジタルアートなどの分野で先行して注目されてきたが、
根幹技術であるブロックチェーン技術は既に社会課題の解消に活用されている。

世界食糧計画(WFP)の「Building Blocks」プロジェクトはその一つ。
ブロックチェーン技術を使うことで、シリア難民への効率的で確実な食糧支援を実現した。

同様にNFTを活用すれば、様々な課題を解決できる。
例えば学生が取り組んだ研究も、著作権や実用新案の形で唯一無二のものと証明できる。

それを売買するマーケットプレイスが生まれれば、自社の技術やパーパスを探求する学生に
インターンなどの学習体験を提供したい企業や団体は増えるだろう。

なぜNFTでなければならないのか。
この話をすると必ず聞かれるが、その時は「安心・信頼できるコミュニティーを作るため」と答えている。

NFTは全取引が記録され透明化されるので、裏取引ができない。

PABLOSのNFTを売る時も、なじみ客から「締め切りを過ぎても買えないか」と頼まれたが、
取引記録が透明なので便宜を図ることはしなかった。

だから信頼し合えるコミュニティーを醸成できるのだ。

有用性を伝えるため、私はNFTを以下3つの略語だと再定義している。
Nurturing memories(記憶を育む)、Fostering creativity(創造性を養う)、
Transforming Goodwill(善意を形にする)
だ。

この3つに注目すれば、NFTは社会に大きな価値を生み出すツールとなる。

教育や地域活性化、環境などの課題に対応し、透明性と信頼性を提供するだけでなく、
私たちが大切にするものを次世代へと確実に伝えていけるのである。

NFTの略語を再定義することで、技術は単なるデジタル資産管理を超えて、
未来を築くための新しい社会基盤に変革される。

その変革は子どもたちが周囲を巻き込む形で進行し、まちづくりの可能性まで秘めている。

 

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