本業に生かせる「副業」 ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」19/4/29号

2019/5/7

検索トレンドをみると、ここ2年ほど、右肩あがりに伸びている言葉がある。
「副業」だ。

働き方改革の一環として、厚生労働省が昨年1月から「副業解禁」へ舵(かじ)を取ってから、
人々は副業について敏感に反応している。

副業というと、一般的には、会社が許可するかどうかが話題になりがちだが、
マーケッターとして注目すべきなのは「自社のサイトに『副業』という文字をどう入れていくか」だ。

なぜなら、あなたの会社が副業を提供する側に回れば、優秀な人材を集められ、
新成長への突破口を開くチャンスをつかめるからだ。

人を集めるには、どんな副業を提供すべきなのか?
そもそも政府の副業解禁の趣旨は、本業での残業が減った分、他社で収入を補う、ということではない。

今まで終身雇用のなかで社内にとどまりがちだった人材が、
異業種・異分野との関わりによって、スキルアップを果たし、社外人脈を増やす。

ひいては、社会イノベーションを活性化させることに政府の狙いがある。

それは副業をする人から見ても同じだ。
目先の収入よりも、今までの経験を生かして自分の可能性を広げるために副業に着目している人は少なくない。

つまり、本業での活躍につながる副業を提供していくのがいい。
ライティングや編集、プログラミングなどの副業は人気だという。

しかし、それだけでは目的にかなう良質な副業とは言い難い。

本業につながる副業の成功事例の一例として紹介したいのが「読書会のファシリテーター」だ。

一般社団法人のリードフォーアクションは、社会問題を解決するための読書会を開催、
本を通じてつながろう、という活動を2011年から展開している。

その読書会のファシリテーターをすることで、本業にも好影響を生み出している人が次々と現れている。

例えば、大手通信会社で技術営業を担当した人物は、
ビジネスイノベーションに関する読書会を社外で開催していたところ、
読書会に参加した人から仕事の案件が持ち込まれた。
その結果、営業成果も上がり、マーケティング本部長まで昇格した。

また、電気機器メーカーに勤務していた人物は、興味をもったビジネスモデル構築に関する洋書の読書会を展開。
結果、全国での人脈が広く築かれ、今は行政と共に「まちぐるみ読書会」などの活動に尽力している。

自分の興味のある分野で、読書会を開催することで、似たビジョンを持った人材が集まってくる。
それをきっかけに大企業の中で培われた経験やスキルが浮かび上がり、本業でも生かせるようになるわけだ。

デジタル技術が発達し、もはや副業は日本全国、どこにいてもできる。
しかし、やりがいや社会的意義があり、本業に生かせる「副業」は、圧倒的に不足している。

そんな副業を提供できれば、特に、人材リソースの限られる地方の中小企業にとっては、
優秀な人材を集められることにつながる。

地方創生といった社会的課題の解決にも取り組めるようになる。
「副業」は成長への突破口を開くカギになるはずだ。

 

 

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