「会社」に代わるものは? ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」20/11/30号

2020/12/7

この11月で、4フロアあった東京・表参道の事務所から全面撤退する。
実は社員の発案だ。

理由は、事務所経費の削減ではない。
リモートワークがメインになると、事務所を保持することのデメリットが、メリットを上回るからだ。

当社に関わるメンバーの3割は、関東圏ではない。うち半分が関西圏でさらに2人は東欧に住んでいる。
リモートワークで働く人同士が円滑なコミュニケーションをするには、ときにリアルに集まることが必要だと考えていた。

企業の成長の源泉は人だ。

フェイストゥフェイスで腹を分かち合うから、会社のために力を注げるチームを作り出せる。
あれこれ雑談をするからこそ、新しい発想が生まれる、と考えていた。

だがリアル会議を重視するのは逆効果と気づいた。
事務所に通える人は対面でミーティングできるが、そうでない人もいる。

結果、メンバー間に温度差が生じてしまう。
コロナが収まり対面会議が増えれば、オンラインの人は疎外感を感じ、社内の分断が起きる。

拠点があるとかえってマイナスになると判断した。

当初はそれで経営が成り立つのか、疑わしく思っていた。
集まる場所がないと会社はバラバラになるのでは、と。

だが実際にやってみると何も問題が起こりそうにない。
社員は通勤がなくなり喜ぶし、小さな会社ながらリモートになり3人の社員が子供を授かった。

それに全世界どこからでも、優秀な副業人材を採用できる。

リモートだと単発的な仕事依頼ができるので、互いに試せる。
面白い仕事なら「もっとその会社で活躍したい」となる。

オンラインミーティングでは、明確にアウトプットが出せるメンバーだけが評価される。
その結果、数値にもとづくマネジメントが急速に進んだ。つまりいいことずくめなのだ。

やりがいを感じてもらうには、一体感を持って働ける堅固な企業文化が必要だが、それも十分に補えた。

「始業時に今から仕事を始める合図に、今日の気分を一言、顔文字で入れる」
「毎日のミーティングでは、自分が立てた目標を達成するうえでの障害を乗り越えるため、
必要な協力を他のメンバーに要請する」
「毎週のミーティングでは会社の行動規範のクレドを部署ごとに確認する」
「顧客からのクレームを1件1件チームで確認し、仕事を改善する」

といった小さなルールを実行することで、今まで以上にしっかりとした企業文化ができた。
飲みニケーションはできなくなった今、むしろ、リモートのほうが企業文化を構築しやすい。

私は、10年前の著作で「2023年には会社がなくなる」と予想した。

もちろん法人格としての会社はなくならないが、
「社で会う」というそもそもの「会社」の定義は実質的な役割を終えるだろう。

それに代わる概念は目的によって駆動される組織、
「パーパス・ドリブン・オーガニゼーション(PDO)」になると考える。

年末に向けてすべての会社が「どんな目的を持って事業を運営しているのか」
「未来にモテる目的があるか」を問い直すべきタイミングだ。

 

 

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