イノベーションに子供の発想力 ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」23/9/25号

2023/10/2

生成AI(人工知能)の普及により、
企業では新規事業開発に取り組んでイノベーションを生み出そうとする機運が高まっている。

だが結論から言おう。

大人たちだけでイノベーションを生むのは難しいというのはちょっと言い過ぎだが、
子供の力は借りる方が得策だ。

未来志向の発想が広がり、イノベーションが、単なる仕事(ライスワーク)ではなく、
自分事(ワイフワーク)になっていく。

とくに今、分野を越えてイノベーションを生み出す活動は絶好のタイミングだ。

公教育でプロジェクトの立案・実行を通じて学びを深めていく探究学習が始まり、
実社会との連携が求められているからだ。

私が5年の構想・企画の末に開催にこぎつけたのが、3日に開いた「探究リンクカップ」である。

このイベントは大阪・関西万博の「TEAM EXPO2025」プログラムの一環として
自主的に取り組んでいる共創チャレンジだ。

探究学習を本格化する教育界とイノベーションを推進する産業界が手を組み、
日本発いのち輝くプロジェクトを世界に向けて発信することを目指している。

プログラムの一つ「未来実現探究」は、企業の課題について子供たちが解決策を示す。

コニカミノルタの新規事業「AccurioDX」推進チームが取り組む課題について、
大阪府枚方市立東香里小学校の児童らは自ら考えるアプローチを発表した。

同社の課題は、人々の「見たい」に応えるために印刷を始めとした技術を開発し
製品・サービスを生み出してきたが、次にどんな「見たい」に取り組むかだ。

小学生のプレゼンを聞き、創造力に驚かされた。

たとえば「ウイルスが見えたらいい」という発想から生まれた
予防医療に進出できる可能性を示唆したプロジェクト。

「周りの人や自分の感情が見えたらいい」という観点から生まれた
ウェルビーイングの改善につながるプロジェクト。

眼鏡をかけることで今後4年間の災害予知が見えるプロジェクト……。
子供たちはコニカミノルタをデータビジュアリゼーションカンパニーと捉えていたのだ。

プログラムで特にこだわった点は、大人があれこれ指示やヒントを出さないこと。
求める答えを忖度するようになり、過去からの延長の発想で自らを縛ることになるのを防ぐためだ。

大人に必要なのはアンラーニング。
自分たちが詰め込んだ知識を一旦無にし、子供の声に耳を傾けることで大人も新しい未来を描けるようになっていく。

子供たちの提案がすでに大人たちが挑戦していたとしても「子供たちも同じ未来を見ている」と捉えればいい。
すると取り組んでいることが未来の担い手を引きつけられ、持続的に発展・進化できるという希望を描ける。

大阪・関西万博に向かうこうした舞台で企業と連携すれば、子供たちの進路選択にも好影響をもたらすかもしれない。

子供たちの視点を世界に向けて発信するこのチャレンジが、10年後、企業の新しい価値創造の源泉となるのではないか、と
私は子供のようにワクワクしている。

 
 

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