事業創出の風土育む ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」23/11/6号

2023/11/13

「第10回クロスセクターリーダーズサミット」が10月5日に開催した。
このアワードは、私が発起人として2014年から毎年開いている。

社会課題の解決に向け、分野を超えたリーダーシップの重要性を強調。
パーパス経営を支援・促進することが目的。

今年度、特に注目すべき取り組みだったのは、優秀賞に輝いたリハライフサポート(静岡市)である。

同社は理学療法士や作業療法士を全国的にネットワーク化しており、
彼らに、現場に即した技能をトレーニングする「リハライフサポート大学」というプログラムを提供している。

マクドナルドのハンバーガー大学やディズニーユニバーシティといった企業内大学のようなものだ。

注目すべきは、スタッフたちが仕事の技量を伸ばすだけでなく、
ウェルフェアを軸にした新規事業を次々と生み出し始めたことである。

例えば「リハストレッチ」。
スマートフォンで全身の写真を数枚送るだけで、人工知能(AI)がゆがみを分析。
その人にぴったりのストレッチを導き出し、遠隔指導する。

同社によれば、デスクワークやリモートワークでパソコンに向かう時間が圧倒的に増え、
目の疲れや肩こりなどを訴える人が増えた。

ただ、原因は人によってバラバラ。
従来は対面での指導が必要だったが、遠隔でもある程度できるようになったという。

もう1つの例は「リハケーション」。
リハビリとバケーションを組み合わせた造語で、心と身体をリフレッシュしながら深い学びをしていくという事業だ。
自らの身体と対話して健康を増進しながら、自らの会社や業界を超えた人材交流を育んでいく。

こうした事業を、社員たちが驚くほどスピーディーに立ち上げ始めたのである。
このような事業家精神を育む教育はかつて難しかったが、可能になったのには2つの理由がある。

1つは、モバイルで必要な知識や技術を習得できる環境が提供できるようになったこと。
もう1つは、マーケティング技術の進化だ。

アイデア創発からプロトタイプの構築、キャッチコピー、資金調達や実行までをデジタル技術で簡易化できている点である。

結果、現場のメンバーが、痛みを抱えるお客様と接するなかで感じていた顧客ニーズを事業化しやすくなった。

意欲ある数人が挑戦したところ、面白くて社会的意義のある企画が生まれた。
プロジェクトが動き出すにつれ、周囲も熱を帯びていった。

通常、こうした風土ができ上がるには時間がかかる。
社長が「3年間で11の新規事業を創出しよう」と宣言したのも大きいが、
最大の要因は顧客と直に触れる現場をエンパワーしたことだ。

私の観察によれば、理学療法士や作業療法士は、難関の国家資格を取得した優秀かつ思いやりのある人材の宝庫である。
現実的な業務の負担により、希望を描けず消耗していることも多い。

こうした構図は他の現場の仕事でも当てはまるだろう。

人材がいないのではない。
彼らが育つための適切な養分が、ほんの少し足りないだけである。

 
 

神田昌典の「ビジネス探究」チャンネル
累計販売数400万部超のビジネス書著者、
日本のトップマーケッター(GQ JAPAN誌)として選出された「神田昌典」公式チャンネルです。
月曜20時から「神田全集~未来からの伝言」を配信中!



MAIL MAGAZINE・SNS
メルマガ・ソーシャルメディア


メルマガ一覧を見る