先細るリアル書店 ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」23/11/20号

2023/11/27

ある出版社の社長との会話で、リアル書店が大幅に減っているという話題になった。

日本出版インフラセンター(東京・千代田)の調査によると、2022年の全国の書店数は1万1495店。
13年の1万5602店と比べると3割近く減少した。

はるか前から分かっていたことだ。私が本を出し始めた20年前、書店や出版取次を集めて基調講演したことがある。
00年に日本に進出した米アマゾンの売り上げ急伸に不安を募らせていた参加者のために、Sカーブ分析を手がけた。

書店流通のライフサイクルは長いと分かったものの、衰退期を含めても33年には寿命が尽きる。
従来のイメージの書店が消えるまで、残り10年のカウントダウンに入った。

人々の間で活字に対する渇望がないわけではない。

出版科学研究所(同・新宿)の調査によると、22年の電子出版市場が5013億円で、
出版市場全体に対する占有率が30.7%、電子出版市場は4.4倍に膨らんでいる。

データから類推すると、本が読まれなくなったというよりは読み方が変わったといえるだろう。

私もリードフォーアクションという世界最大級の読書会を展開するなかで、変化を実感している。
本を読まずに参加できるのが特徴だ。本部で主催すると本が100~200冊売れることも珍しくない。

昨年、この読書会で読まれた本大賞に輝いたのは「多様性の科学」。
「サピエンス全史」のような壮大な本もいいが、論考を理解するので精いっぱい。

それより少し読み応えがあり、自分の意見を形成しやすい本が読まれやすい。
読書は著者ではなく、自分を理解するためへと目的が大きく変わっているのである。

書店の力が失われることは、社会変革を育む土壌が失われることだと私は考えている。
本ほど社会変革の種を宿しているメディアはないからだ。

本づくりでは著者がさまざま逡巡(しゅんじゅん)しながら歯を食いしばって緻密に探究し、自説を形作るプロセスを踏む。
そこまで手をかけるからこそ、1冊の本が世の中のムーブメントを築き、社会変革を起こすのである。

その本を世の中に広める上で書店の力は不可欠だ。

我が子が小さかったとき、一緒に書店に行くのが日課だった。読みたがる本は全て買うようにしていた。
学びは価値があるという認識を自然に養えるのも書店の良さ。

そういうリアルな場が失われれば、読書文化も喪失し、ひいては言論の自由も揺らいでいくだろう。
だから、本の読み方の変化に応じ、リアル書店も転換することが必要だ。

図書館も変容しつつある。東京都に「おしゃべりOK」という開架エリアがある図書館が登場した。
友人や親子で話しながら本を選べ、読書会のようなディスカッションも推奨する。

書店でも読書会を開ける無料スペースを提供してはどうか。
読書会は5~6人が最も効果的なので、小さなスペースでOKだ。

人は気づきや友人知人と出会った場所に、繰り返し戻ってくる。
書店を放置し衰退させるのでなく、進化を促すタイミングに来ている。

 
 

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